2010年10月07日

ギリギリロックガーデン*重森三玲庭園美術館

重森三玲庭園美術館を見学しました。

完全予約制ですが、当日午前中に電話したら、午後の部の定員に空きがありました。(1回につき10名程案内してくれる。)

重森三玲邸書院・庭園(重森三玲庭園美術館)

Wikipedia「重森三玲」


看板が無いので、一見普通の屋敷にしか見えない

京大正門から歩いてすぐ。吉田神社南参道手前で、元は神社の社家(しゃけ、代々神社の神職を世襲する家)の鈴鹿家の邸宅だったとか。こじんまりした静かな所でした。見学時間まで庭に通じる木戸はぴったりと閉ざされています。待つことしばし。


「重森三玲庭園美術館」と書かれた表札と、「準備中」の紙が

時間になって中に入ってひと目見ると、日本庭園にしてはやけに石(青石)が多い印象。さすがアバンギャルド!



が、同時に、小中学校の校庭の一角や中庭にあった、花崗岩とか安山岩がゴロゴロ並んだ岩石見本の庭、在学中一回ぐらいは「石や岩についての理科の授業で見ることになるアレ」を思い出してしまって、正直スマンかった。


母校の理科用岩石見本庭園、極めて適当な枯山水?

大阪万博の頃、「アメリカ館の月の石ってのはつまり、これと同じようなもので・・・」と、玄武岩を指し示して先生が説明してくれたっけ。

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週刊少年マガジン昭和44年6月22日号表紙


苔と、直前に打ち水がされたであろう濡れた石と、「ここから先は立ち入り禁止」の結界を示す黒い棕櫚縄を十文字に掛けた丸石(止め石、関守石とも言う)が美しい。


紐で結わえてあるのが「結界」の印


入場してすぐ、「庭園書院見学コース600円か、茶室も見るコース1000円のどちらにするのか?」問われます。

もちろん、ここまで来たのだから、せっかくだから全部見るコースです。「大きな荷物は持ち込まないで」「この先は立ち入らないで」「庭石保護の為なるべくゴム底のお履物で」等々とされる注意に、保存と一般公開の両立の難しさが窺い知れました。


多分誰が撮っても同じ写真

仄暗い書院から見る庭が美しい。交流のあったイサムノグチのペンダントライトが、江戸期の建物にマッチしています。モダンです。


書は三玲本人によるもの



点灯して欲しい



最初の印象こそ「岩石だらけ!」の庭でしたが、試しにどれかひとつ手で隠して見ると、素人目にも見事に全体の均衡が崩れる。しかもどの角度から見ても!これは凄い!



「石が多いだと?・・・ふ、なら一つでも無くせるか?これ以上ふさわしい位置に移動できるか?できるならやってみろ!」と、美学とパズルゲームが混ざったみたいな問題を、作庭家から突きつけられている気がする。

もちろん、これ以上石を置くことも考えられない。絶妙なバランス、ギリギリのせめぎあいと構築美。


石は蓬莱島、出舟に亀などに「見立て」られている

そのせいか、昼寝がしたくなる詩仙堂建仁寺の庭と違って、ここはあんまり気が休まらない・・・と言うか、ダラダラしていてはいけない、居住まいを正して見るべき「緊張感のある庭」って感じ。リラックスしてしかるべき自分ちの庭なのに・・・いや、だからこそ色々実験実践できたのか。



開けて内部を覗かせてくれる

奥にある三玲の建てた茶室「好刻庵」は、外からの見学です。(写真も外から)



みどころは市松模様の襖。あと、その上にあるケガの功名というか、乾燥で割れが生じて逆に立体感が出ちゃった藤の花を彫った欄間。取っ手や釘隠しといった細部にも、美への探究心が感じられる工夫がされていますが、近くで見られないのでちょっと。



砌石の置かれた軒下のとこ(名称何?)は、左官さんのコテ塗りが終わった後に、三玲自らがわざと箒目が付くように箒で掃いたそうで、つるつる平面より自然な味わいがあります。

一晩乾燥させているうちに、もし、猫が通って足跡が付いていたらどうしたのかな~?塗りなおしたのかな~と、またいらんことを考えるわし。


竹箒で掃いたらしい。敷石の目地とともに弁柄(べんがら)が加えてあるので赤っぽい


東福寺開山堂庭園の猫の足跡


見学はここまででしたが、できれば駒井家住宅や宵山に公開される町家のように、居室や台所が見たかったです。こういう確固たる「美意識」を持つ人間が、普段はどういう部屋で寝起きしていたのか、どういうキッチンで食事を整えていたのか興味をそそる。


母屋も江戸期の建物

案内の方が「この奥の方(部屋)は相続の関係で・・・」と、ちょこっと裏事情ぽいことを漏らしてました。




隣は一般住宅、裏はアパートが近接していて、ベランダに洗濯物がヘンポンと翻るのが簾越しに見える。向こうにしてみれば、観光客の目がいつもあるようでイヤだろうな。


坪庭があるが良く見えない



今回の「みどころ」。


書院にも茶室にも吊るしてあった。「しつらえ」のひとつ?

例えばナントカ家のハシリ(台所)の天井に、山鉾のてっぺんの飾りが吊ってあるのは頗る「京都!」ですが、これはどう見てもオサレ雑貨風、マイ・バースデイのおまじない風アジサイのドライフラワー※注です。

用途はズバリ!「魔除け」だそうで、京都に通うようになってから、様々なお札やお守りの類を拝見いたしましたが、このタイプを見るのはここが始めて。

永遠のモダン」提唱者の手による空間に、「真紅のバラのポプリを飾れば憧れの彼と云々」とか、「玄関にドライフラワーを飾るのは風水的に×!」というのと分類的には同じ乙女ちっくなものがあったことに、何故だかちょっとホッとしました。(言ったら怒られそうだけど)


何かとモダン


注意と説明がみっちりで、見学に要する時間は1時間20分程。「吉永小百合が(アクオスのCM撮影で)ここに立った」なんて解説は別にいいからさあ、静かに庭を眺める自由時間が欲しかった。


作者本人は好刻庵からのこの眺めが気に入っていたとか

京都観光で、お土産買ったり記念写真を撮ったりする時間抜きで、ごく狭い一箇所だけでこれだけ滞在するのは、かなり贅沢な部類に入ると思います。「とにかく色々な場所を回りたい!」「心を落ち着けて庭を眺めていたい」という方にはどうかな?と。


※注・・・ネットでざっと調べたら、兵庫県の若狭野天満神社(わかさのてんまんじんじゃ、通称「あじさい神社」)に、ドライフラワーの「魔除けあじさい守り」というのがあった。魔除け厄除け(婦人病・健康祈願、金運財運祈願)に効くそうな。


追記

息子娘に三玲(本名・計夫)がつけた名がスゴい。完途(カント)、弘淹(コーエン)、埶氐(ゲーテ)、由郷(ユーゴ、女子)、貝崙(バイロン)。

於菟(オット)、茉莉(マリ)、杏奴(アンヌ)、不律(フリッツ)、類(ルイ)の森鷗外んちに勝っている。DQNネームと言ってはいけない。

同じく三玲作の東福寺方丈庭園についてはこちらへ
「輝きのコイン 銀河美庭園伝説*東福寺方丈庭園」







Posted by いたのり at 02:15│Comments(2)
この記事へのコメント
初コメントです^^
私もお人形大好きで、昭和初期の子やビスクちゃんたちと暮らしています!お人形棚の写真、なんだか私の部屋ととっても似てる(笑)
また市松さんたちの写真とかも見せてください~☆また遊びにきます。
Posted by ゆうか at 2010年10月09日 11:36
コメントありがとうございました。
先日、市松人形の着物を秋冬物に着替えさせて、棚の中も
少し入れ替えましたので、機会を見てまた写真を載せたいと思います。
ゆうかさんのお部屋やお人形さん達、是非拝見したいです。

概ね変な京都ネタとレトロネタのブログですが、いつでも遊びにきてくださいね^^
Posted by いたのりいたのり at 2010年10月18日 01:26
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