2010年10月14日

進々堂京大北門前店のバイクは如何にして出走するか?

「80周年!」の堂々たる貼紙が目を惹いたので、久しぶりに「進々堂」に入ってみました。言わずもがなの、京都の超有名老舗カフェです。

店内は写真撮影厳禁なので、外からの写真をお楽しみください


貼紙と言えば、ここはアルバイト募集の紙も良く出ていますが、時給等詳細が記されていたことが無い。参考までに、界隈の飲食店は概ね時給750~850円なり。

パンの小売部の出入り口


「山口さんちのツトム君」的昭和チックイラスト


清水焼?


店内には「机や椅子を計測すんなicon08」の主旨の貼り紙がありました。木工の人間国宝黒田辰秋作の長テーブルや長椅子のサイズを計る客がいたのかな?祇園の鍵善良房(黒田作品有り)でも計っていたら笑えるけど。

(倉敷の大原美術館の裏のカフェ エル・グレコが、同タイプのテーブルと椅子でしたが、作者本人に進々堂の写しを作ってもらったのだそうな。)

パリのカルチェ・ラタン地区のカフェを模したそうな。ガーゴイルも?



「80周年」の件ですが、店内の説明文には「昭和5年(1930年)に曽祖父 続木斉と黒田辰秋が出会い、カフェを云々」とあり、これは市内でパンの販売とカフェチェーンを展開する「株式会社 進々堂」のHPの社史に沿っている。でも、ここ京大北門前店に関しては「現在別法人」と記載されるのみ。

「別法人」と言ってもお店だから、非営利の財団法人や社団法人である訳が無く、要するに営利法人=別会社。

根っこは一緒みたいだから、「京大北門前店もよろしく!」的文言や写真が、会社HPにあっても良いものですが、沿革以外は何故か全くスルー。

「曽祖父 続木斉」とあり、株式会社進々堂の社長も続木ナニガシというからには、現店主は同じ一族だろうに・・・一澤帆布的な何かがあるのだろうか?




前にも書いたように「古い図書館の閲覧室」のような、レトロで静かでアカデミックな空間が売りの店です。旅の恥は掻き捨て的な騒がしい観光客や、常連顔で振舞う学生客が皆無なことが、一人客には非常に好ましい。

但し、サービスというか愛想は何時行ってもイマイチ。禁煙喫煙席の仕切りが無い。クッションやひざかけの類は無し。トイレ(一旦庭に出なければならない)は和式。京大生に愛されるとありますが、年配客※注も多いのに・・・。特にハイシーズンや知恩寺の手作り市の日(毎月15日)は、妙齢の御婦人方で賑わいます。


2階の窓はステンドグラス。見たい


中央部の書棚には「ダ・ヴィンチ」「サライ」「ENGINE」「ロッキングオン(3年前の)」「AERA」「美ストーリー」「フィガロ」「環」「暮らしの手帖」「芸術新潮」「和楽」「濃青(京大体育会系機関誌)」・・・う~む、店の備え付けと言うよか、客が読み飽きた本を置いていったらこうなった的品揃えだ。ダ・ヴィンチと親和性の高い「活字倶楽部」や「ファミ通」を、こっそり混ぜておきたい。

万城目学が自家製カレーパンセット(カレーパンではなくカレーとパンのセット。給食のカレーシチューとパンの組み合わせを思い出す。780円)を食している先月の「dancyu」は置かないのかな?でも、この店を作中使ったのは、マキメじゃなくて森見登美彦だ。黒髪の乙女が似合う喫茶店。


「京都モーニング巡礼」として進々堂、イノダ本店、ル・プチメック、六花が紹介されている



で、この店の最大の謎です。

中庭(裏庭。店内同様撮影禁止。テラス席もあって良い感じなのに、園芸道具や枯れた鉢植えが出しっぱなしで手入れ不足)のトイレ脇にいつも置いてある、ヤマハのでっかくて赤いオンロードタイプのオートバイ

写真はイメージです


店の雰囲気に全然そぐわないのもアレですが、これを出し入れする外部直結の出入口が、どこにも見当たらねー!!!ここの敷地はフェンスというか塀でガッチリ囲まれている。一体どうやって道路まで出すんだ???


レンタカー屋とマンションに囲まれている

脇に母屋の入り口っぽいのがあるから、そこから京風に玄関直結のハシリにでもなっているのかと思ったが、左隣はレンタカー屋さんの駐車場で塀。裏と右隣はマンションで同じく塀。2階への外階段が見えるだけで、建物はカフェとパン小売部の2箇所以外、出入口は一切無い。

唯一考えられるのは、店内を通って直接店舗出入口から今出川通に出し入れ・・・できないこともないが、まさかね。でも、それしか・・・。 

老舗カフェから、いきなりライダースーツの主(?)と赤いオンロードバイクが出走するのを想像しながら、名物プチ・デジュネ(パンがマフィンなだけの愛知県人にとっては普通のモーニング風セット500円)を食べ終えるわし。

足元もタイル(陶板の破片?)でオシャレ





80周年と言っても、清算時に特に粗品の類はくれませんでした。(実はこれをちょっと期待して入ったのである。記念カフェオレカップを1800円で販売中。)

ここは毎度レシートを出してくれませんが、お店ほどでは無いが年季の入ったレジスターだから、交換用のレジロール紙が既に生産終了なんだろうと、好意的に解釈しておこう。




隣のマンション1階のシサム工房で雑貨を見て帰ろう

※注・・・京都の有名喫茶店は古いが故に、冷暖房の効きにムラがあったり、店内に思いも寄らない段差があったり、トイレが狭かったり和式だったりする所が多い。

子供や年寄り連れ観光の休憩場所としては、冷暖房、洋式トイレ、ゆったりシート、店員のサービス(愛想)という点で、ファストフードやカフェチェーン店の方を推奨します。六角堂の隣のスタバ三条大橋袂と錦小路(錦市場の西側)のスタバが、京都らしい立地でオススメ。

追記・・・進々堂では大学の先生やその道のオーソリティーを迎えて、定員20名ほどでお茶しながら科学のお話という店内イベントが時折催されるようですが、いつ何があるのか、その際一般客は締め出しなのかどうか不明。面白そうなのに。お店のHPを作って告知して欲しい。



追々記

「バイクの出入り口の謎」について、コメントで解答をいただきました。ありがとうございました!


  


Posted by いたのり at 23:42Comments(4)

2010年10月07日

ギリギリロックガーデン*重森三玲庭園美術館

重森三玲庭園美術館を見学しました。

完全予約制ですが、当日午前中に電話したら、午後の部の定員に空きがありました。(1回につき10名程案内してくれる。)

重森三玲邸書院・庭園(重森三玲庭園美術館)

Wikipedia「重森三玲」


看板が無いので、一見普通の屋敷にしか見えない

京大正門から歩いてすぐ。吉田神社南参道手前で、元は神社の社家(しゃけ、代々神社の神職を世襲する家)の鈴鹿家の邸宅だったとか。こじんまりした静かな所でした。見学時間まで庭に通じる木戸はぴったりと閉ざされています。待つことしばし。


「重森三玲庭園美術館」と書かれた表札と、「準備中」の紙が

時間になって中に入ってひと目見ると、日本庭園にしてはやけに石(青石)が多い印象。さすがアバンギャルド!



が、同時に、小中学校の校庭の一角や中庭にあった、花崗岩とか安山岩がゴロゴロ並んだ岩石見本の庭、在学中一回ぐらいは「石や岩についての理科の授業で見ることになるアレ」を思い出してしまって、正直スマンかった。


母校の理科用岩石見本庭園、極めて適当な枯山水?

大阪万博の頃、「アメリカ館の月の石ってのはつまり、これと同じようなもので・・・」と、玄武岩を指し示して先生が説明してくれたっけ。

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週刊少年マガジン昭和44年6月22日号表紙


苔と、直前に打ち水がされたであろう濡れた石と、「ここから先は立ち入り禁止」の結界を示す黒い棕櫚縄を十文字に掛けた丸石(止め石、関守石とも言う)が美しい。


紐で結わえてあるのが「結界」の印


入場してすぐ、「庭園書院見学コース600円か、茶室も見るコース1000円のどちらにするのか?」問われます。

もちろん、ここまで来たのだから、せっかくだから全部見るコースです。「大きな荷物は持ち込まないで」「この先は立ち入らないで」「庭石保護の為なるべくゴム底のお履物で」等々とされる注意に、保存と一般公開の両立の難しさが窺い知れました。


多分誰が撮っても同じ写真

仄暗い書院から見る庭が美しい。交流のあったイサムノグチのペンダントライトが、江戸期の建物にマッチしています。モダンです。


書は三玲本人によるもの



点灯して欲しい



最初の印象こそ「岩石だらけ!」の庭でしたが、試しにどれかひとつ手で隠して見ると、素人目にも見事に全体の均衡が崩れる。しかもどの角度から見ても!これは凄い!



「石が多いだと?・・・ふ、なら一つでも無くせるか?これ以上ふさわしい位置に移動できるか?できるならやってみろ!」と、美学とパズルゲームが混ざったみたいな問題を、作庭家から突きつけられている気がする。

もちろん、これ以上石を置くことも考えられない。絶妙なバランス、ギリギリのせめぎあいと構築美。


石は蓬莱島、出舟に亀などに「見立て」られている

そのせいか、昼寝がしたくなる詩仙堂建仁寺の庭と違って、ここはあんまり気が休まらない・・・と言うか、ダラダラしていてはいけない、居住まいを正して見るべき「緊張感のある庭」って感じ。リラックスしてしかるべき自分ちの庭なのに・・・いや、だからこそ色々実験実践できたのか。



開けて内部を覗かせてくれる

奥にある三玲の建てた茶室「好刻庵」は、外からの見学です。(写真も外から)



みどころは市松模様の襖。あと、その上にあるケガの功名というか、乾燥で割れが生じて逆に立体感が出ちゃった藤の花を彫った欄間。取っ手や釘隠しといった細部にも、美への探究心が感じられる工夫がされていますが、近くで見られないのでちょっと。



砌石の置かれた軒下のとこ(名称何?)は、左官さんのコテ塗りが終わった後に、三玲自らがわざと箒目が付くように箒で掃いたそうで、つるつる平面より自然な味わいがあります。

一晩乾燥させているうちに、もし、猫が通って足跡が付いていたらどうしたのかな~?塗りなおしたのかな~と、またいらんことを考えるわし。


竹箒で掃いたらしい。敷石の目地とともに弁柄(べんがら)が加えてあるので赤っぽい


東福寺開山堂庭園の猫の足跡


見学はここまででしたが、できれば駒井家住宅や宵山に公開される町家のように、居室や台所が見たかったです。こういう確固たる「美意識」を持つ人間が、普段はどういう部屋で寝起きしていたのか、どういうキッチンで食事を整えていたのか興味をそそる。


母屋も江戸期の建物

案内の方が「この奥の方(部屋)は相続の関係で・・・」と、ちょこっと裏事情ぽいことを漏らしてました。




隣は一般住宅、裏はアパートが近接していて、ベランダに洗濯物がヘンポンと翻るのが簾越しに見える。向こうにしてみれば、観光客の目がいつもあるようでイヤだろうな。


坪庭があるが良く見えない



今回の「みどころ」。


書院にも茶室にも吊るしてあった。「しつらえ」のひとつ?

例えばナントカ家のハシリ(台所)の天井に、山鉾のてっぺんの飾りが吊ってあるのは頗る「京都!」ですが、これはどう見てもオサレ雑貨風、マイ・バースデイのおまじない風アジサイのドライフラワー※注です。

用途はズバリ!「魔除け」だそうで、京都に通うようになってから、様々なお札やお守りの類を拝見いたしましたが、このタイプを見るのはここが始めて。

永遠のモダン」提唱者の手による空間に、「真紅のバラのポプリを飾れば憧れの彼と云々」とか、「玄関にドライフラワーを飾るのは風水的に×!」というのと分類的には同じ乙女ちっくなものがあったことに、何故だかちょっとホッとしました。(言ったら怒られそうだけど)


何かとモダン


注意と説明がみっちりで、見学に要する時間は1時間20分程。「吉永小百合が(アクオスのCM撮影で)ここに立った」なんて解説は別にいいからさあ、静かに庭を眺める自由時間が欲しかった。


作者本人は好刻庵からのこの眺めが気に入っていたとか

京都観光で、お土産買ったり記念写真を撮ったりする時間抜きで、ごく狭い一箇所だけでこれだけ滞在するのは、かなり贅沢な部類に入ると思います。「とにかく色々な場所を回りたい!」「心を落ち着けて庭を眺めていたい」という方にはどうかな?と。


※注・・・ネットでざっと調べたら、兵庫県の若狭野天満神社(わかさのてんまんじんじゃ、通称「あじさい神社」)に、ドライフラワーの「魔除けあじさい守り」というのがあった。魔除け厄除け(婦人病・健康祈願、金運財運祈願)に効くそうな。


追記

息子娘に三玲(本名・計夫)がつけた名がスゴい。完途(カント)、弘淹(コーエン)、埶氐(ゲーテ)、由郷(ユーゴ、女子)、貝崙(バイロン)。

於菟(オット)、茉莉(マリ)、杏奴(アンヌ)、不律(フリッツ)、類(ルイ)の森鷗外んちに勝っている。DQNネームと言ってはいけない。

同じく三玲作の東福寺方丈庭園についてはこちらへ
「輝きのコイン 銀河美庭園伝説*東福寺方丈庭園」



  


Posted by いたのり at 02:15Comments(2)